せき

せきが止まらない

長く続くせきについて

毎日の生活の中で、せきが長く続く事があります。

  • かぜをひいた。せきが続いて、痰がからむ。
  • 以前からずっと痰がでて、時々咳がつよくなる。
  • のどの痛みや発熱等、かぜの症状は治まったけど、何週間もせきが続く。
  • 胸が痛いし、せきがでる。
  • 日中時々強くせき込む、人と話しているときに突然せきが止まらなくなる。
  • 電話中や接客中など、せきが出て欲しくない時に限ってせきが強くなる。
  • 香水や柔軟剤などの強いにおいがあると、せきがひどくなる。
  • 寒い空気に触れるなど、空気の温度や湿度の変化により咳がでる。
  • 夜間、せき込んで眠れない。
  • せきをしすぎて頭が痛くなる、胸が痛くなる。

呼吸器内科外来には、多くの患者さんがこのような症状のため来院されます。

せきが長く続くと、周囲の人から「なにか変な病気じゃない? 調べてもらったら?」と言われることもあるようです。
あちこちの医療機関を受診してもあまり症状が改善せず、同じような薬を処方され、「様子をみてね!」で終わってしまう。
何の病気なんだろう?と思いながら、いろいろと自分でググってみる。

そうです!
“長く続くせき”の原因を見つけるのはとても難しいのです。
呼吸器を専門にしている医師でも、せきの原因がすぐに見つかることもあれば、なかなか診断がつかず苦労することも多くあります。

実際の診察では、まずはせき(咳嗽:がいそう)の種類を分けて考えます。

症状持続期間と感染症による咳嗽比率

咳嗽比率

日本呼吸器学会 咳嗽に関するガイドラインでは、せきが続く期間をもとに、以下の様に分類しています。

  • 急性咳嗽:せきが続く期間が3週間未満
  • 遷延性咳嗽:せきが続く期間が3週間以上8週間未満
  • 慢性咳嗽:せきが続く期間が8週間以上

このような分類により、せきの原因を大まかに推測します。

上のグラフの様に、
急性咳嗽(3週間未満のせき)では、多くがかぜや気管支炎、肺炎などの感染症です。
遷延性咳嗽(3週間以上のせき)では、徐々に感染症以外の比率が多くなってきます。
慢性咳嗽(8週間以上のせき)では、結核や非結核性抗酸菌症など特殊な感染症を除き、ほとんどは感染症以外の疾患となります。

このように、まずは問診などでせきの持続期間をもとに、大まかに感染症の有無を類推します。

せきの原因を調べる

まずは感染症の有無を調べ、その後は肺の器質的疾患(肺が破壊される病気)を除外する。

原則的には、感染症が疑われる場合、まずは感染症の治療を優先します。

急性咳嗽の場合、多くがかぜなどの上気道炎、気管支炎などです。
軽微なかぜや上気道炎の場合、せきの仕方や痰の性状、発熱といった臨床症状、診察による身体所見などから診断を行います。
原因はウイルスである事が多いため、対症療法を行い、安静、水分、栄養補給を行いつつ自然治癒を待つのが一般的です。
せきに対しては、鎮咳薬を投与し咳を鎮めます。

1~2週間以上発熱や咳嗽、喀痰が続く場合には、肺炎の合併を調べる必要があるため、必要に応じて胸部レントゲン、血液検査を行います。
肺炎には肺炎球菌などによる一般的な肺炎以外にも、マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎等があり、必要時には鑑別を行います。
マイコプラズマ肺炎の診断には血液検査でのマイコプズマ抗体価測定、または咽頭ぬぐい液でのマイコプラズマ迅速抗原検査などが可能です。
クラミジア肺炎も、クラミドフィラニューモニエIgA抗体価などの測定により診断することが可能です。
ときに百日咳などによる長期の咳嗽もあり、PCRによる検査や百日咳菌IgA抗体などにより診断することもあります。
診断が確定すれば、抗菌薬による治療を行います。

3週間以上せきが続いた場合には、感染症以外の肺の器質的疾患(肺が破壊される病気)を疑います。
この段階では、ほとんどの場合、胸部レントゲンの検査を行う必要があります。
胸部レントゲンを行う事により、肺がん、肺結核、COPD、間質性肺炎、時に心不全や胸水貯留など、見落としてはいけない疾患を除外します。
万が一、胸部レントゲンで異常が見られた場合には、胸部CTを撮影し病気の精査を行う必要があります。

当院では、箕面市立病院など近隣の病院と連携し、必要時には早急に胸部CTを行う体制にしています。

器質的疾患が除外されたあとは、以下の遷延性咳嗽、慢性咳嗽でよくある病気を鑑別していきます。

遷延性咳嗽、慢性咳嗽で
よくある病気とその特徴

気管支喘息・咳喘息

気管支喘息の患者さんは近年多くなっています。
喘鳴を伴う気管支喘息の診断は、診察や聴診を丁寧に行う事で診断する事が出来ます。
しかし咳喘息では、せきが長く続くものの診断は難しい事もあり、多くの医療機関をまわり受診されている患者さんもおられます。

以下の様な特徴があります。

  • 症状が季節によって変化する。
    春の花粉症の時期や、寒くなってくる秋や冬にせきが強くなる。
    梅雨や台風の時期には一時的にせきがでるが、夏は一般に無症状のことが多い。
  • 喘鳴や運動時の息切れ、時に胸痛などがある。
  • 夜寝る前や夜間にせきが悪化する、夜眠れないほどせきが出る。
  • 香水や柔軟剤などの強いにおいがあると、せきがひどくなる。
  • かぜの後にせきが続く。
  • 空気の変化や温度、湿度の変化により咳がでる。
詳しくはこちら

感染後咳嗽

かぜをひいた後、咳が長く続く場合、感染後咳嗽の可能性があります。
かぜやマイコプラズマ、百日咳など呼吸器感染症が治ったあとでも1ヶ月程度咳が続くことがあり、これを感染後咳嗽と呼びます。
感染後咳嗽は自然に軽快するため、必ずしも治療は必要ありませんが、鎮咳剤、漢方薬、その他の内服薬を使用し咳を鎮めます。
感染後咳嗽は、他の呼吸器疾患を除外した後に診断される疾患のため、診断はとても難しいと思います。

胃食道逆流症(GERD)

胃酸が逆流する事で逆流性食道炎を引き起こすものを胃食道逆流症(GERD)と呼びます。
これも、慢性咳嗽の原因と言われています。
治療は胃酸を抑える薬(PPI)を比較的長期間内服します。

(私が刀根山病院に勤務していた時、ある先生が熱心に研究をされていました。
胃食道逆流症により食道の炎症がおこり、食道の前にある気管膜様部を刺激するためにせきが出るとの仮説を立てておられました。)

症状は以下のようなものがあります。

  • 胸やけがする、のどが酸っぱい感じがする
  • 食後にせきがひどくなる
  • 起床時や会話時にせきがつよくなる
  • 咳払いが多くなり、声がかすれることもある

その他

降圧薬のアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤や後鼻漏、副鼻腔気管支症候群なども咳嗽の原因として挙げられます。