気管支喘息(咳喘息)

概 要

気管支喘息は、気管支に慢性の炎症が続くことにより、気道が過敏になる病気です。
このため、ハウスダストや花粉、天候の変化、運動、強い臭いなど、さまざま刺激により発作的に気道が狭くなり、咳が続いたり、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーと呼吸の時に音がして苦しくなること)が出たりします。
症状は、突然出現することが多く、呼吸困難感や、胸の苦しさ、圧迫感などを感じることもあります。
日本では子供の11~14%、大人の6~10%が喘息患者さんと報告されています。
喘鳴など呼吸苦症状をともなうものを気管支喘息、症状はせきのみで検査で異常をほとんど示さないものを咳喘息と呼んでいます。

原因と症状

喘息の原因ははっきりとは分かっていません。気道に炎症を起こす原因としては、ハウスダスト、ペットのふけ、カビや花粉などによるアレルギーが多いのですが、その原因が特定出来ないことも多くあります。

喘息の特徴的な症状は、発作的に咳や痰が出て、ヒューヒュー、ゼーゼーという音とともに呼吸が苦しくなる喘鳴が出現するというものです。これを喘息発作と呼び、夜寝る前や夜間、早朝に発作が起こりやすいなど特徴があります。これらは、1日の中でも全く症状が無い時期や、とても強い症状が出る時期をくり返します。また、春や秋などに喘息は悪化し、夏は比較的落ち着いているなど、季節によっても大きく症状は変化します。

喘息の恐ろしい点は、喘鳴をくり返していると気道の炎症は持続増悪し、さらに気管は過敏になる。喘息発作を繰り返しているうちに、気管支の壁が分厚く硬くなり、元に戻らなくなります。このことはリモデリングと呼ばれ、喘息の難治化、慢性重症化を引き起こし、喘息による突然死の原因となっています。

喘息治療では、このリモデリングを防止することがとても重要です。

症状イラスト

診 断

喘息の診断では、その特徴的な症状により喘息を疑うことから始まります。心不全やCOPD、肺の器質的疾患など、他の病気を除外した後でなければ気管支喘息と診断できません。喘息は除外診断でもあるため、胸部レントゲンを行う事がとても重要で、レントゲンのしっかりとした読影がとても重要であると思います。

多くの場合、特徴的な病歴の聴取や聴診により喘鳴を聴取することで、気管支喘息の診断は可能です。他に、呼吸機能検査で気道の空気の流れが悪くなっていること、気管支拡張薬の吸入後にそれが改善する事などを確認し、喘息と診断します。また必要時には、血液検査でのアレルギー検査などを行う事などもあります。呼気中のNO測定も喘息の診断に有用です。難治性喘息の場合、アスピリン喘息などの患者さんもおられるため、注意が必要です。

治 療

昔の喘息の治療は、“喘息発作がでたら症状を止める”事でした。対症療法のような治療で、これのみではリモデリングを止める事はできませんでした。

現在の喘息治療はこれとは大きく変わっています。吸入ステロイドを吸入することで気道の炎症を抑え、喘息発作を起こさせないことが中心になっています。

喘息治療の大きな目標は、

  • 発作を起こさせないように予防する事
  • 運動などもできて、他の人と全く変わらない日常生活が送れるように病気をコントロールする事
  • リモデリングを起こさない、進行させないこと、喘息死を防止する事です。
喘息コントロール状態の評価

現在の喘息治療の主役は吸入ステロイド剤です。適切に使用する事で、全身への副作用はほとんど無く安全に使用できるものが発売されています。

まずは喘息の重症度を分類し、喘息予防・管理ガイドラインに基づいて吸入ステロイドの量を調整します。症状によっては吸入ステロイドの種類を変更したり、他の内服薬を追加したりします。もし発作が起こった場合には、即効性のある気管支拡張薬(β刺激薬)を吸入します。

未治療の端息の臨床所見による重症度分類(成人)

喘息治療は、症状が止まれば終わりではありません。リモデリングを防止し、喘息発作が再発しないようにする事が重要です。吸入ステロイドについては、ガイドラインに基づきしっかりと長期間使用することが大切で、治療を継続していくことが最も大切な事なのです。

喘息治療ガイドライン

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